電撃G'sコミックで連載中の「姉なるもの」の感想です。
「姉なるもの」は同人からスタートし、商業誌でも連載開始した作品です。
同人版も平行して連載しており、こちらは成年指定版、商業版は全年齢版となっています。
ここでは、商業版の感想を書いていきます。
※電撃G'sコミックは2019年5月号をもって刊行形態を変更し、web媒体に特化した展開をしていくとのことです。
具体的には、「ComicWalker」及び「ニコニコ静画」での連載を中心に行っていくそうです。
姉なるもの の内容
事故で両親を亡くし親戚をたらいまわしにされている少年・夕。
叔父と暮らすようになったのは先月のこと。
叔父は夕に好きに生活させるが、蔵に入ることを禁じる。
ある日、叔父が入院してしまい、一人で生活することになった夕は探しものをするため禁じられた蔵へ入る。
蔵の地下に足を踏み入れた夕の前に闇の中から角が生えた美女が現れ、問う。
「あなたの大事なものと引き換えに望むままを与えましょう」
夕は、彼女に姉になって欲しいと願うのだった。
姉なるもの キャラクター
夕
5歳のとき両親が事故で亡くなっている。
迷惑をかけないようなるべく静かに暮らしていた。
しかし、それが逆にかわいげがない子供ととらえられ親戚中をたらいまわしにされる。
幽霊が見えるため、目で追ったり話しかけたりしていたため、他の人から見たら不気味にうつり、さらに孤立していったものと考えられる。
現在は母の従弟にあたるおじさんの家に身を寄せる。
※父の弟 との表記もあり。
千夜
蔵の地下で夕と出会った、時には神と呼ばれ、そして悪魔と呼ばれた存在。
大事なものと引き換えに望むままを与える。
長い黒髪は触手で頭に山羊の角が生えており、蹄のある獣の足をもつ。
涼
広い家にひとりで暮らす夕の叔父。
いつも蔵に籠っており、必要なこと以外は会話をすることがない。
現在は入院中。
姉なるもの の感想
物語の冒頭のモノローグでこうあります。
人生のうちのある時を、『姉』とともに暮らした。
彼女の優しい声が、甘い髪の匂いが、柔らかな肌のぬくもりが、今でもありありと思い出される。
出典:姉なるもの 1巻
このことから、「この物語は夕の過去の出来事であり、現在は姉と暮らしていない。」
素直に考えればこのように考えられます。
もう・・・・嫌な予感しかしません。
その予感がどのようなものなのか。
物語は完結していないので、ただの予想ですがこのあと書いていこうと思います。
あたたかい幸福に満ちた日々
神や悪魔と呼ばれ、永劫のときをただ微睡むように生きていた千夜さんと、一番親の愛情が必要であろう5歳で両親を亡くし親戚中で厄介者扱いされてきた夕。
この二人が特別でもない普通の日常を送るだけであたたかい気持ちになります。
料理を作って二人で食べる。
夕にお姉ちゃんと呼ばれる。
雨が降ってきて洗濯物を取り込み、自分の怖いものについて話す。
図鑑をみて家の周辺で身近な生き物を探す。
など。
本当になんでもない日常ですが、ずっとひとりぼっちだった夕にとっては一番欲しいものなのでしょう。
千夜さんも同じだと思います。
現代人が忘れかけている感情を思い出させてくれるような気がします。
神や悪魔と呼ばれている千夜さん
千夜さんは、夕との出会いで自らを「千の仔孕む森の黒山羊」と名乗っています。
これはなんなのか。
調べてみました。
クトゥルフ神話に登場する外なる神の一柱。豊穣の女神。
「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」、「狂気産む黒の山羊」、「黒き豊穣の女神」、「万物の母」などの異名を持つ。
豊穣・母神という性格を持っており、アスタルテなどの地球の様々な豊穣の女神、大地母神の原型にして、ワルプルギスの夜に祀られる悪魔の原型ともなったとされる存在。
「豊穣」の概念そのものではないかともされる。
生命力を司り象徴する神。故に産み増える慈愛の母性と同時に、森の力強い生命力の象徴の男神としての側面も同時に備え持っている
出典:ピクシブ大百科
クトゥルフ神話の女神だそうです。
私はクトゥルフ神話は「這いよれ!ニャル子さん」くらいでしか触れたことがない気がします。
私と同じように詳しくない人も安心してください。
特にクトゥルフ神話について知らなくても(今のところは)楽しめる作品です。
千夜さんは神か悪魔なんだなぁ、くらいの認識でOKです。
その神か悪魔は、夕の願いを受けてヒトの肉を纏い姉になります。
ヒトの姿で暮らしていたこともある、という千夜さん。
※過去、ヒトの姿で暮らしていたときの記憶のようなものがフラッシュバックする描写もあります。あまりいい記憶ではなさそうですが。
しかし、ヒトの社会や常識についてはあまり詳しくないようです。
弟のために料理をする、といい胎盤を調達しようとしたりします。
ヒトに召喚されるといつも捧げられていたからご馳走なのかと思っていたらしいです。
そこから少しずつ、ヒトの物や常識に目をキラキラさせながら興味を持っていくシーンはとてもかわいいです。
姉弟の魅力と今後の展開
男性読者は姉である千夜さん。
女性読者は弟である夕。
それぞれとても魅力的に感じるのではないでしょうか。
デフォルメされた顔もかわいいです。
私はどちらかというと妹属性だと思っていましたが、千夜さんの魅力にやられました。
姉もいいなぁ、と感じるようになりましたね。
元々姉属性の人はやられすぎて死ぬかもしれません。
夕も純粋でやさしくかわいいので、ショタ属性がない女性読者もメロメロになってしまうのではないでしょうか。
この二人に、3巻終盤で登場する陽が加わってどのような展開をみせるのか。
陽と叔父の関係なども気になります。
気になること
夕と出会ったときに千夜さんは「あなたの大事なものと引き換えに望むままを与えましょう」と言っています。
夕の望むものは家族として姉になって欲しいというものでした。
千夜さんは夕の望む通りに姉になりました。
ただ、現時点で大事なものとは引き換えていません。
どういうことなのか。
私個人の考え(ただの予想)ですが、姉である千夜さんが夕の大事なものなのではないでしょうか。
つまり、千夜さんが本当の姉になってしまったら消えてしまうのでは・・・。
と、ここで感想の冒頭で書いた嫌な予感に繋がるのですがどう思いますか。
だとすれば、夕と千夜さんが一緒にいられる時間は思ったより短いと思うのです。
ドヤるほどの予想でもないですが、私的には一番苦しい終わりかたなので外れることを願います。
どこかの感想でも書きましたが、「Fate/stay night」のセイバーエンドやアニメ「エンジェルビーツ」のような終わりかたは苦しくてつらいです。
まとめ
ハートウォーミングな物語を読みたい人におススメします。
また、姉好き、ショタ好きにもおススメです。
舞台は田舎で田んぼや畦道などがあります。
それに、詩的なモノローグが加わって全然違う物語ですが、ゲームの「僕の夏休み」を思い出しました。
ハートウォーミングなのになぜか胸が苦しくなります。
また、冒頭でも書きましたがこの作品は商業版の他に同人版も同時に展開されています。
商業版は全年齢向けとはいえ、多少のエロ表現はあります。
家族と一緒に見るような状況は少し厳しいかもしれません。
逆にもっとエロが見たいという人は同人版に手を出してみるといいと思います。
姉なるもの コミックス
作者:飯田 ぽち。様
既刊3巻 続巻
※2019年5月7日現在