コミックNewtypeで連載中の漫画「スーパーカブ」の感想です。
ホンダ・スーパーカブ総生産全世界1億台突破記念作品と銘打っているとおり、今となってはどこにでもある「カブ」が登場する青春ドラマです。
コミックNewtype内の人気ランキングで5位以内(2019年6月11日現在)に入っていますが、バイクである「スーパーカブ」の魅力だけで人気があるわけではないと思うだけのものがあります。
原作は同名タイトルのライトノベルで、現在4巻まで発行されています。
スーパーカブ あらすじ
高校2年生の初夏。
両親無し、友達なし、趣味なし。
自分にはなにもないと思っている少女「小熊」
自転車通学をしていた小熊は通学途中に上り坂を走るスクーターを見る。
これがあれば通学が楽になると考え、バイク店を訪れた小熊に店主は格安の中古「スーパーカブ50」を勧める。
この「スーパーカブ50」との出会いが「なにもない」小熊の日常を変えていく。
スーパーカブ キャラクター
小熊
父親を事故で亡くし、母親は失踪した。
頼れる親戚もいないため自力で生活し、奨学生として高校に通う。
友達も趣味もなかったが、ある時スーパーカブ50と出会い様々な経験をしていく。
礼子
成績は上位でスポーツも優秀。
父親は市議会議員、母親は会社経営をしている。
市内の別荘のログハウスで一人暮らし。
小熊のクラスメイト。
スーパーカブ 感想
”バイクと女子高生”というと「ばくおん!!」が思い浮かびます。
題材は近いものだと思いますが、読んだ印象は少し違うものでした。
単に登場するバイクが「ばくおん!!」は中型バイクがメイン、「スーパーカブ」は小型バイク・原付だという違いだけではなく、ジャンルが違います。
「ばくおん!!」はコメディ寄り、「スーパーカブ」はドラマ寄りだと感じました。
また、「ばくおん!!」は色々なメーカーのバイクが登場するのに対して、「スーパーカブ」は(現在発売中の2巻まででは)カブのみが登場します。
ただ、バイクに乗るというドキドキするような楽しさは両者に共通しています。
小熊とスーパーカブの出会い
小熊の父親は既に事故で他界しています。
唯一の家族である母親は失踪・・・というより、捨てられたという印象。
ある日、自転車通学をしている小熊が坂を必死に上っていると、スクーターが追い越していきます。
これがあれば通学が楽だと考えた小熊は近所にある小さなバイク店を訪れます。
原付とはいえ、10万円以上するのは当たり前ですが知らなかったのでしょう。
値段を見てビックリです。
あきらめて帰ろうとする小熊に店主が中古のスーパーカブ50を勧めます。
しかも破格の1万円です。
この価格なら私も欲しいです。
しかし、1万円となると「なぜこんなに安いのか」と思うものです。
尋ねた小熊に店主は「人を殺してる、3人」と答えます。
それでも構わない、と購入することにした小熊。
ここまでが一話目の簡単な流れです。
なにか不穏な言葉も飛び出しておりましたが・・・。
店主の行動を考える
※ただの想像です。
女子高生が値段を見て諦めて帰ろうとしています。
声をかけてみると、原付が欲しいがお金が足りないということらしいです。
そして、中古でよければと「1万円」のスーパーカブを紹介するわけです。
しかし、私は本当の売価は1万円ではないと考えます。
「スーパーカブ50 中古」でググってみると、数万km走っている安いものでも5万円から10万円はするようです。
この結果からも1万円は破格ということがわかってもらえると思います。
しかも、走行距離500km程度のキャブ式カブの極上品です。
ここから考えられることを想像してみると・・・
店主からみれば子供である小熊が少し可哀そうになってしまい、1万円で譲ったのではないでしょうか。
1万円といえば喜んでくれると思った店主は「なんで一万円なのか」と尋ねられたことが意外なことであったため、あせって「人を殺している」と言ってしまったのだと思います。
しまった、と思った店主でしたが「それでも構わない」という小熊にビックリする・・・というシーンにも受け取れます。
ここまでは割りと綺麗な予想。
現実的に考えればこのようにも受け取れます。
小さいとはいえお店を経営して店主は格安で譲ったあとのことも当然考えていると思います。
女子高生ですから、オイル交換やヘッドライト、ウインカーの管球切れ、タイヤ交換、ブレーキシューの交換、バッテリー交換程度でもお店に持ってくるでしょう。
バイクのメンテナンスをすることで元は取れると考えたのかもしれません。
でも、その後自分でパンク修理をする意外とたくましい小熊・・・。
初めてバイクに乗ったときのことを思い出す
小熊がスーパーカブを購入してからの話は初めてバイクに乗ったときのことを思い出します。
免許を取るシーンは1ページであっさり終わってしまいましたが・・・。
大通りを通るのが少し怖かったり、スピードがあまり出せなかったりする姿に懐かしい思い出が蘇ってきます。
私も深夜に練習にでたりしました。
また、出先でガソリンがなくなり青ざめますが、コックをリザーブにしてなんとか切り抜けるというシーンがあります。
私も似た経験があります。
これは私が普通自動二輪を取ってからのことです。
当時私はSR400というバイクに乗っていました。
セルスタータもガソリンメーターもない中古のオンボロバイクです。
ガソリンは走行距離から逆算して消費量を自分で計算しなければなりません。
まだいけるだろう、と思っているうちにガス欠になり、小熊と同じ目にあったことがあります。
他にも、雨が降った時のことや、半ヘルの弱点。
用もないのに知らない道を走るワクワク感など、懐かしいなぁと思うエピソードがたくさんあります。
バイクに乗らなくなってしばらく経ちますが、また乗りたくなってきました。
スーパーカブが欲しくなってきた・・・。
小熊の日常の変化
両親なし、友達なし、趣味なしの小熊ですが、スーパーカブを手に入れてから少しずつ周りの環境が変わっていきます。
クラスメイトからは良くない扱いを受けていた小熊に共通の趣味を持つ友達ができるのです。
クラスメイトの礼子は小熊と逆に何でももっている少女です。
「同じカブ乗り」である礼子と知り合いになったことにより、お互いにいい影響を与え合います。
お昼を一緒に取ったり、カブに乗るために必要な情報を教えてもらったりなど、ありふれていてなんでもないことですが小熊はうれしそうです。
また、小熊はカブを使ってクーリエとして働きます。
クーリエとは
正式には外交通信使。
守秘上、他者に預けられない書類(教員の共同研修の書類)を直接届ける仕事。
出典:スーパーカブ 2巻
平たく言うとバイク便のような仕事です。
そして礼子はカブで富士山登頂にチャレンジします。
登山用にカブを改造してのチャレンジです。
その為に富士山のブルドーザー道で、物資の積み下ろしと走路確認のバイトをしています。
実際に現実でカブで富士山登頂に成功した人がいると作品内で紹介されています。
現在発売している2巻まででは、小熊が普通自動二輪免許を取得するところで終わっていますが、これ以降も変化していく小熊の日常が続いていきます。
スーパーカブとは
2017年に世界生産累計台数1億台を突破し、2018年には誕生60年を達成しているカブについて紹介します。
元は1952年(昭和27年)から1958年(昭和33年)まで生産された自転車補助エンジンキットの商標。英語で熊など猛獣の子供を意味するcubに由来しており、小排気量ながらパワフルなことをアピールした。
その後は、1958年から生産開始されたセミスクーター型モペッドであるC100型以降のシリーズ名スーパーカブの略称として定着した。
スーパーカブ・シリーズは20世紀のモータリゼーション史上において、T型フォードやフォルクスワーゲン・タイプ1の自動車にも比肩しうる貢献を残したオートバイであり、小排気量オートバイ分野ではイタリアのピアッジオ社が製造するベスパと並ぶ世界的ロングセラーである。本田技研工業の調べでは、本シリーズの累計生産台数は2017年(平成29年)10月時点で1億台に達し、輸送用機器の1シリーズとしては世界最多の生産台数および販売台数を記録。さらに同年5月には車名やエンブレム類を表記しない状態での車体形状が、乗り物としては日本で初めて立体商標として登録された。
耐久性と経済性に優れ、発売開始後50年以上を経ても多くの原設計を引き継ぎ、改良を続けながら継続生産販売されている。
1958年からスーパーカブの名前は存在しているそうです。
1958年の出来事をピックアップしてみると
- 東京タワー竣工
- 東京通信工業がソニーに社名変更
- 日清食品が世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売。
などがあります。
東京タワーも60周年を迎えていたのですね。
また、cub(カブ)の由来は英語で熊などの猛獣の子供を意味するとありますね。
主人公の小熊の名前もここから来ているのでしょう。
スーパーカブは、1958年の発売以降、日本国内で広く普及したことから、日本社会の様々な場所で利用されてきた。のちに同クラスのスクーターや、四輪軽自動車等の出現によって代替された用途もあるが、2010年代でも依然、官民を問わずユーザー層は広範である。
業務用途では、中華料理店や蕎麦店など飲食店の出前・商店の小口配達や配送・電力会社や銀行などの集金営業・近距離の巡回輸送・新聞販売店による一般家庭への配達など広範に用いられる。17インチ大径タイヤと耐久性を重視した構造が悪路にも耐えることから、農村を中心とした地方の高齢者にも愛用者は多く、鍬や鎌を荷台にくくりつけて農作業の足代わりと使用されるケースも確認できる。
上述した出前用途では自転車用として開発された出前機が多数転用され大量に普及した副次効果も確認できるほか、郵便・新聞の配達業務についてはそれらに特化したバリエーションとしてMDシリーズやプレスカブも開発された。
納入先の要求による仕様変更にも対応しており、交番配備のパトロールバイクとして導入している警察仕様では、取り外して簡易盾としても使用できる透明ハンドル付きのウインドシールド・警棒収納ケース・書類を入れるスチール製ボックスなどを装備する。さらにかつては食糧庁(現・農林水産省食料産業局・生産局穀物課)納入の小豆色、電電公社(現・NTTグループ)納入の若竹色など専用塗装車が製造された。
個人用途では、市街地移動から耐久性と低燃費から長距離ツーリングやアドベンチャーランまで様々であるが、趣味的観点からドレスアップパーツやチューニングパーツで改造を楽しむ層もおり、海外製パーツも特にカブが普及しているタイ製などが輸入可能で日本国内に専門店もある。さらに近年の傾向として、市街地での駐車違反取締強化や石油価格高騰の影響により、スクーターを含めた原付一種・二種(小型自動二輪車)の所有使用者が増加する傾向があり、カブでも同様な現象が確認される。発売後60年近くを経ていることから、初期型はヴィンテージマシンとしての扱いも受けており、愛好者による保存が行われている。
このようにどこにでもあるバイクで、バイクに興味がない人からするとあまりにも日常的すぎて逆に視界に入らないものなのかもしれません。
本作では礼子が最初に乗っているカブがMD90です。
郵政カブと呼ばれるMDシリーズの「MD」はメールデリバリーの略で、郵便局の配達員が使っているカブだそうです。
近頃の交番のバイクはスクーターに変わっているイメージがあります。
まとめ
スーパーカブを通して友達ができ、色々な経験をして世界が広がっていく青春ドラマです。
このようなストーリーが好きな人におすすめします。
タイトルに「スーパーカブ」とありますが、カブの歴史などにまつわる話がメインの漫画ではありません。
あくまでも主役は人であり、カブはツールとして描かれていると感じました。
メインは人なので、バイクに興味がない人でも十分楽しめる作品だと思います。
興味がない人でもカブが欲しくなってしまうかもしれないです。
なんでもない話、どこにでもありそうな話だから安心して読める。
そんな作品です。
スーパーカブ を読む
原作:
作画:
キャラクター原案:
既刊2巻 続巻
掲載誌:コミックNewtype
無料で試し読み
※2019年6月11日現在。
「スーパーカブ」はコミックNewtypeで連載中です(無料)。――貴方もきっとカブに乗りたくなる少女×バイクの青春物語!…
コミックス版
コミックス版には「おまけ漫画」と原作のトネ・コーケン様による「特別寄稿小説」が載っています。