ゼブラーマン -四十肩のヒーロー-

ビッグコミックスピリッツで連載されていた「ゼブラーマン」の感想です。

漫画版である本作は映画版と基本的な設定は同じですが、まるで違う展開となっています。

作画担当の山田さんもコミックスのあとがきで「宮藤官九郎さんの作品のワクはあるものの、オリジナルのストーリーでやらせてもらってます。」と言っています。

 

映画版のジャンルはSF・アクション・コメディなどに分類されています。

しかし、漫画版は「ヒューマンドラマ」だと感じたのでジャンルはそのようにさせてもらいました。

原作:宮藤官九郎様 作画:山田玲司様 出版社: 小学館 (2004/2/28)

ゼブラーマン あらすじ

 

冴えない小学校教師・市川新市。

家庭からも職場からも必要とされておらず、ストレスに耐える毎日を送っていた。

 

そんな新市の心の拠り所は「ヒーロー」である。

その中でも子供の頃に夢中になった特撮ヒーロー番組「ゼブラーマン」に憧れを抱いていた新市はコスチュームを作り、身に着けることで心を慰めていた。

ある夜ゼブラーマンの姿で外出した新市は、世間を賑わせている猟奇的殺人事件の犯人「切り裂き魔」と遭遇してしまう。

ゼブラーマン キャラクター

 

市川新市(ゼブラーマン)

小学校教師。

家庭は崩壊し、家族はバラバラ。

勤めている小学校は受け持っているクラスが学級崩壊を起こし、担任を外されてしまう。

ひょんなことからゼブラーマンとなった新市は、様々な事件に巻き込まれ、解決していくことになる。

 

市川みどり

新市の娘。16歳の高校生。

普段の生活態度を心配する新市を疎ましく思っており、夜遊び、朝帰りを繰り返す。

そこで知り合った男がゼブラーマンに登場する怪人「カニジャック」と呼ばれる「切り裂き魔」だった。

 

市川幸世

新市の妻。家庭を顧みず、子供の世話も放棄。

人妻の焼死事件の犯人であるゼブラーマンに登場する怪人「サソリダマー」に攫われてしまう。

 

市川一輝

新市の息子。

薬を打った子供を使って殺人をさせる怪人「モズーマンソン」による大人狩り事件に巻き込まれる。

 

浅野晋平

不登校児。

父親の自殺現場を目撃してしまったショックで歩けなくなり、車いすで生活を送る。

新市とは不登校児の家庭訪問で知り合う。

新市と協力し怪人による事件の解決していく。

 

浅野加奈

晋平の母。看護師。

新市の学生時代の想い人。

幸代と同じく、人妻焼死事件に巻き込まれる。

 

警視庁

及川虎次

捜査一課刑事。

切り裂き魔事件・人妻焼死事件などの一連の事件に繋がりを感じ捜査をする。

切り裂き魔事件を捜査中ゼブラーマンの正体を突き止める。

事件の規模が大きくなってきている状況を考え、新市に事件に関与することをやめるよう助言する。

ゼブラーマン 感想

特撮ヒーロー「ゼブラーマン」とは

悪の帝王・宇宙人「グレイ」と戦うために現れた光と闇のヒーローである。

しかし、彼には何一つとして特別な能力は与えられていない。

戦うたびに傷つき傷んでいく、それでも彼は諦めることはない。

自ら鍛え上げた身体だけを使って戦い続ける男。

それがゼブラーマンである。

 

昭和53年に放送され、わずか7話で打ち切られた。

新市にとっては、伝説のヒーロー番組であり、現在でも心の支えとなっているヒーローである。

ゼブラーマンとなった新市

基本的にゼブラーマン(新市)は一般人である中年男性がコスプレしているだけのヒーローです。

魔法も特殊能力も武器もありません。

途中で成長して必殺技を身につけたり、パワーアップもしません。

心はヒーローでも肉体は一般人なため、数あるヒーローものの作品の中でも最弱に近いヒーローかもしれません。

そして、怪人もゼブラーマンと同様に、基本的にはコスプレしているだけの一般人です。

 

怪人となってしまった人達は心に深い恨みや欲望をもっています。

作中で詳細な描写はありませんが、「銀河教会」というグレイがアジトを構える風俗店で怪人たちは心まで怪人となってしまうのです。

最初の怪人カニジャックによれば、銀河教会は「欲望のままに生きることを許可してくれる」とのこと。

 

怪人たちは一般人ですが、それぞれ武器をもっています。

カニジャックは巨大ハサミ。

サソリダマーは強力なバーナーと神経毒。

モズーマンソンは背中のジェット。

これらの怪人たちに、ゼブラーマンは素手で立ち向かいます。

 

ときには一方的にボコボコにされ、守ろうとしている人たちに殺されそうになりながらも戦います。

その姿が最高にカッコ悪いのに最高にカッコいいです。

正に父親のようなヒーローです。

※私の勝手なイメージです。

崩壊した絆の再生

新市は家庭・学級、それぞれ崩壊している中でストレスに耐えながら生活しています。

ゼブラーマンとなり、流れでカニジャックに襲われていた女子高生を助けたことから新市の中のヒーローが育ち始めます。

そして、新市が完全にヒーローとなったのは、カニジャックに娘のみどりが襲われ命を落としそうになっている現場を目撃したことからだと思います。

このときに、「ヒーローがなぜあれほどまでに怒り、戦うのかわかったような気がした」とあるとおり、逃げ腰だった新市が刃物も恐れず戦います。

 

この後も事件が起こるたびに、なぜか新市の家族が次々に事件に巻き込まれ解決していくわけですが、基本的には決着をつけるのはバトルではありません。

うまく言葉にできませんが、「男と男のぶつかり合い」「男の矜持」「仲間の絆」で決着するという感じでしょうか。

 

すごく心に響く言葉が多く、元々涙もろい私は目頭が熱くなることもしばしばありました。

 

事件に巻き込まれた家族を一人一人助けるたびに、新市と家族の絆が再生していきます。

種類はまったく違いますが、藤沢とおるさんの作品「GTO」でクラスが少しずつ変わっていくような感じに似ています。

 

また、怪人たちも新市と同じように心になにかを抱えているだけの一般人なのです。

もし、新市の中にゼブラーマンがいなければ・・・・

銀河教会に迷い込んでいたら・・・・

新市も怪人になっていたはずです。

”どんなに悲しい目にあっても戦う。

それがヒーローなんだと、ゼブラーマンは教えてくれていた”

 

”どんな人間だとしても、まちがえる事はある

まちがえる人間は寂しかった人間だ”

出典:漫画版ゼブラーマン

このように、ゼブラーマンの言葉が新市の支えになり、ヒーローとして踏みとどまることができたのだと思います。

作中で発生する事件概要

ここで「漫画版ゼブラーマン」で発生する事件の概要について記しておきます。

事件はゼブラーマンの舞台となっている八千代区という架空の地域で起こっています。

また、八千代区は作中での特撮TV番組「ゼブラーマン」が撮影された場所でもあります。

切り裂き魔事件

怪人「カニジャック」による事件。

カニ男が少女を攫い殺害するというTV番組ゼブラーマン第2話「切り裂かれた夜」と同様に事件が発生していく。

また、切り裂き魔の犯行現場はTV番組ゼブラーマンのロケ地のイメージと重なるため、犯人はカニジャックが行った犯罪をなぞっていると考えられる。

 

ゼブラーマンのシナリオでは、カニジャックの最後のバトルシーンは「満月の夜のビルの建設現場」である。

また、八千代区内に一か所だけビルの建設現場がある。

以上のことからビル建設現場が次の犯行現場だと考え、現場に駆け付けたゼブラーマンの前にカニジャックの手にかかろうとする娘「みどり」の姿があった。

人妻焼死事件

怪人「サソリダマー」による事件。

TV番組ゼブラーマン第4話「マリアの涙」を模倣するように事件が発生。

UFOに乗ったグレイが校庭にメッセージを残す場面から、主婦を火あぶりにする怪人サソリダマーの仕業と判明する。

また、校庭のメッセージが発見されたタイミングでネット上にゼブラーマンの第4話のシナリオがアップされたことにより、誰かがタイミングを見計らって動いているのではと推察する。

シナリオ通りに進んでいけば、生け花のカルチャーセンターで一度に10人の主婦が火あぶりになる。

カルチャーセンターで行う十魔女火刑と称する現場には、妻である幸世と晋平の母である可奈が・・・。

大人狩り事件

怪人「モズーマンソン」による事件。

TV番組ゼブラーマン第6話「ブラッドネバーランド」のシナリオではゼブラーマンは怪人モズーマンソンに惨敗することになっていた。

モズーマンソンは、自分の手を汚さずに薬と洗脳プログラムによって子供たちを操り人を殺す凶悪怪人。

背中に背負ったジェットと呼ばれる装置で空を飛ぶことができる。

新市の息子「一輝」と加奈の息子「晋平」が洗脳され、モズーマンソンの手先となって大人たちを襲う。

それを阻止するゼブラーマンだったが、シナリオ通りに敗北してしまう。

グレイはゼブラーマンを洗脳し、怪人「バジリスクスタンリー」へ変えようとする。

学校爆破事件

ゼブラーマン最大の敵、宇宙人「グレイ」による事件。

ゼブラーマン最終話「銃声」のシナリオがゼブラーマンに届く。

シナリオでは”ゼブラーマンが自らを撃つ”となっていた。

「グレイ」は有名学校への裏口入学を餌に大勢の親子を学校に集め、爆破することを計画する。

対峙したゼブラーマンに銃を渡し、自分自身を撃てば計画を中止するという。

ゼブラーマンの選択は・・・。

まとめ

映画版と違い、怪人や宇宙人は一般人のコスプレです。

ゼブラーマンも特殊能力を身に付けたりはしません。

極めつけは、漫画版ゼブラーマンの言葉「俺たちは・・・・空を飛べない」です。

本当に空は飛べません。

 

このように、映画とは違う作品だと思いますが、同時に、基本的はところは似ている部分もある作品でもあります。

 

漫画版ゼブラーマンはヒューマンドラマである。

と思います。

家族の絆、仲間との絆。

事件が終わるたびにボロボロになっていくヒーロー。

こういった作品が好きな人におすすめします。

ゼブラーマン コミックス

 

原作:宮藤官九郎様

作画:山田玲司様

全5巻:完結

掲載誌:ビッグコミックスピリッツ

作画:山田玲司様 作品リスト

  • 17番街の情景 (コミックモーニング、1986年 - 1988年)
  • RAIN (1986年)
  • COLD (コミックモーニング、1987年)
  • 真夜中の蒸気船 (コミックモーニング、1987年)
  • 眠れぬ夜のために (週刊ヤングサンデー、1987年 - 1988年)
  • 霧の降る夜に (コミックモーニング、1988年)
  • 不器用なテレフォンフィッシュ (週刊ヤングサンデー、1988年)
  • 木曜日の絵画達
  • SWEET DREAMS (月刊アフタヌーン、1989年)
  • 理想主義者の屍に乾杯 (自費出版、1989年)
  • 適応の条件 (ロッキングコミック、1989年)
  • イデオロキッズ (宝島、1990年)
  • 駿河台ブレイクダウン (マンガ宝島、1990年)
  • Bバージン (週刊ヤングサンデー、1991年 - 1997年)
  • インディゴブルース (短編集、1992年)
  • ストリッパー (ヤングサンデー増刊号「大漫王」、1994年)
  • 心のジョアンナ (1994年)
  • ドルフィン・ブレイン (第一部:週刊少年サンデー・第二部:週刊少年サンデー超、1995年 - 1997年)
  • 人生裏口入学 (コミッカーズ、1995年 - 2000年)
  • あらいぐまタンピー (近代麻雀、1997年)
  • アガペイズ (週刊ヤングサンデー、1998年 - 2000年)
  • NG (週刊ヤングサンデー、2000年 - 2001年)
  • ゴールドパンサーズ (週刊ヤングサンデー、2001年 - 2002年)
  • 絶望に効くクスリ (週刊ヤングサンデー、2003年 - 2008年)
  • ゼブラーマン (原作:宮藤官九郎、ビッグコミックスピリッツ、2004年 - 2005年)
  • しあしご (木楽舎『ソトコト』、2005年 - 2007年)
  • いのちの食べ方 (アスコム『田原総一朗 責任編集 オフレコ!』、2005年)
  • 水の鳥 (短編集、2007年)
  • ほんと未来はどうなるの? あかりちゃんとタルト (フリーペーパー『豪快な号外』収録、2007年)
  • ココナッツピリオド -地球温暖化を止めるウサギ- (ビッグコミックスピリッツ、2008年 - 2009年)
  • エコエコパンドラ (まんがくらぶオリジナル、2008年 - 2009年)
  • リア充ハンター ウサラッチ (FLASH、2009年)
  • SOUL BOX MAN (近代麻雀、2009年)
  • ゼブラーマン2 〜ゼブラシティの逆襲〜 (原作:宮藤官九郎、月刊スピリッツ、2009年 - 2010年)
  • 絶望に効く薬 敗者復活編 (FLASH、2010年 - 2012年9月)※『マケデミー賞』改題
  • 美大受験戦記 アリエネ (ビッグコミックスピリッツ、2011年 - 2014年)
  • スーパースーパーブルーハーツ (クラブサンデー、2015年)
  • CICADA(原作:山田玲司、作画:バナーイ 月刊!スピリッツ、2016年 - 2018年)
  • シェアボーイ(漫画家 山田玲司 公式サイト、2017年 - )
  • 白亜 (原作:山田玲司、作画・原案:愛☆まどんな 2019年)

出典:Wikipedia

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