惨殺半島 赤目村 -閉鎖された村で起こる惨劇-

のどかな風景の村で起こる惨殺劇を描いた作品「惨殺半島 赤目村」の感想です。

 

作中の舞台となる赤目村は日本神話とそのアレンジをベースにした伝承が残り、半月後に大神の怒りを鎮める古式に則った奉りが行われるという設定となっています。

 

一見のどかな赤目村に赴任してきた医師・三沢勇人が巻き込まれる惨劇とはどういったものなのか。

設定なども含め簡単に説明していきたいと思います。

作者:武富 健治様 原作協力:中島 直俊様

惨殺半島 赤目村 内容

 

美しい景観に囲まれた姫ヶ崎半島にある赤目村。

過疎化が進む無医村である赤目村に医師・三沢勇人が赴任することになった。

10年ぶりの医師の赴任を歓迎する村人たち。

 

しかし、次第に開発推進派である村長一派と反対派である青年団の確執から始まる複雑な人間関係に巻き込まれていくことになる。

 

事件を事故として処理しようとする村人たちに不信を抱き、独自に調査する勇人は不可思議な伝承と古い因習を知っていく。

徐々に露呈していく村の暗部に、勇人は全ての村人が信じられなくなっていくのだった。

そして、惨劇の幕が上がる。

 

惨殺半島 赤目村 キャラクター

 

主人公

三沢勇人

都会の喧騒から逃れるため田舎への異動を希望し、赤目村の村長・六車の古い友人の紹介で赤目村へ赴任した医師。

右手で触ったものの過去を少しだけ見ることができるが、普段は能力を抑えるため、鹿革の手袋をしている。

古いリゾートホテルを改装し、村長が命名した「あかめ村ぽぴい診療所」に勤める。

 

閼伽目(あかめ)家

閼伽目祥子

赤目神社の巫女。

10年前の土石流被害の生き残り。

人見知りでほとんど口を利かないが、勇人には興味を示す。

77年ぶりに行う古い祭で儀礼と舞いを奉納することになっている。

 

笹間秋奈

勇人の診療所の階下で村唯一の飲食店である雑貨屋兼居酒屋「阿喜菜」を経営する女性。

元は閼伽目家に嫁入りしていたが、10年前の土石流で夫と死別。

現在は村のならわしで籍を抜いている。

しかし、現在でも閼伽目家の生き残りの「おばば」と「祥子」の世話をしているやさしい女性である。

明るく親切で、村の住民に慕われている。

 

村長一派

六車宗一

赤目村の現村長。

村の将来を考え、開発による村の発展と利便性の向上に力を入れている。

村のリゾート化などの事業に熱心に取り組むが現在のところ失敗が続いている。

考えが真逆の青年団と対立している。

 

六車八蔵

秋菜の夫「次郎」の弟分だったため、現在も秋奈に付き従う。

六車の分家筋の出であり、立場は村長派だがどちらの派閥にも属さない。

開発推進派でも対立派でも強引に物事をすすめることを嫌っている。

村に訪れる人の案内役でもある。

 

青年団

逢坂義次

親分肌な性格で団員らに慕われている村の青年団の団長。

開発推進派の村長らとは対立関係にある。

村長が連れてきた勇人を簡単には信じられず、過激な嫌がらせをする団員らを抑える大人な対応ができる。

分校に年の離れた妹の文江が通っている。

 

分校

丹沢

村唯一の学校の教師。

元は部外者だが、学生のころにサークルの旅行で立ち寄った村の美しさに魅せられ移住を決意する。

青年団側の考えに近く逢坂たちに親しみを感じているが、勇人と同じように村長の紹介で村に赴任したため、村長派のイメージが付いてしまっている。

 

落人の谷地

高橋耕太

学校内での立場が悪く、村八分のような扱いを受けている。

胸元から複数の打撲痕が確認されており、いじめや虐待を受けている可能性がある。

高橋家は村中の嫌われ者で、特殊な事情があると推察される。

瞳という妹がいるが同じような扱いを受けている。

 

乙女組

花田スミレ

乙女組の一員でコスプレ好き。

ネット通販で様々な衣装を取り寄せている。

落人の谷地の高橋耕太の母親の妹である。

 

乙女組とは

村に移住してきた外部の女性のこと。

 

観光で村に訪れた都会の女性が村の暮らしにほれ込み、移住を希望することがある。

村は移住する場として、乙女小屋と呼ばれるバンガローのような建物を提供している。

乙女組は乙女小屋で共同生活を送り、農家への嫁入り修行を兼ねて薬草の栽培をしている。

秋奈も元は乙女組出身である。

 

惨殺半島 赤目村 感想

 

赤目村は古代の浪漫があふれる美しい景観に囲まれたのどかさがある村です。

失敗してしまったリゾート化の影響で朽ちた観覧車や古いリゾートホテルがあり、ちぐはぐな印象ではありますが・・・。

 

一部の村人を除き、10年ぶりの医師の赴任に村人たちは歓迎しているようです。

しかし、すぐに陰惨を極める村の暗部が明らかになり、様々な事件が発生していきます。

 

全部読んで見ると、まるで古いサスペンス・ホラーの映画や2時間ドラマを見ているかのような感覚です。

推理ものといった感じではなく、ミステリー要素はあまりありません。

 

また、主人公の勇人は触れたものから過去の出来事を読む能力がありますが、肝心の部分は見えないガッカリサイコメトリーなので犯人がいきなり判明するなどというオチにはなりませんので安心してください。

 

惨殺半島 赤目村 魅力とポイント

 

ポイント1

閉鎖された空間での住人の確執

舞台となる赤目村は、タイトルに半島とついていることからわかるように、離島ではありません。

村の片側が海、もう一方が山となっているため外の世界にでるには船を使うしかありませんでした。

それでは不便なので、トンネルを掘って陸路で外の世界に出られるようになったのですが、過去の台風被害によりつぶれてしまい、復旧する費用の面から放置されている状態です。

 

この閉鎖された村では対立した二つの派閥があります。

村長一派と青年団です。

一つずつ説明します。

 

村長一派は開発推進派です。

昔、赤目村は生薬作りで成り立っていました。

戦前には薬づくりのノウハウを生かし、けしの栽培をおこなっていましたが戦後には法で禁止されたため、先代村長が観賞用のポピーの栽培を打ち出し村の経済危機を脱したという経緯があります。

現在になり、ポピーだけでは特産品として限界があると考えた現村長がポピーを売りにしたレジャーランドを企画するも失敗してしまいます。

現在は漁業権を売った貯金と海産物加工やお土産作り、農業で生活していますが村長はまだ村の発展を諦めていないように見えます。

 

村長は村を豊かにしようと考え開発を行っているのだと思います。

しかし、それを快く思わない人たちも一定数はいるのです。

 

それが対立派の青年団です。

彼らは貧乏でも質素でもいい。村の伝統を守り自然と調和して生きようと考えています。

真偽は不明ですが、彼らは10年前に起きた土石流は乱開発による森林伐採が原因で地滑りが起きやすくなっていた為だと主張しています。

この土石流で閼伽目家は赤目神社の秘宝をあずかるツタと孫娘の祥子を残し全滅してしまいます。

また、秋奈の夫である次郎も土石流に巻き込まれて亡くなっています。

 

このような出来事があったために、対立している二つの派閥の溝はより一層深まり、もはや修復不可能な関係となっていると考えられます。

 

ポイント2

村の古い因習と惨殺劇

タイトルから、惨殺に次ぐ惨殺。ぐちゃぐちゃのスプラッター。

このようなものを想像してしまいがちです。もしかして私だけでしょうか。

 

この想像はいい意味で裏切られ、太陽が沈んで暗くなっていくように徐々にサスペンス的な恐怖感が増していく展開となっています。

終盤は概ね最初の想像どおり惨劇だらけとなりますが。

 

徐々に暗くなる恐怖感とは逆に、村の暗部が露呈していく過程は怒涛の展開といっていいスピード感です。

牧歌的楽園とはいかないと理解していても、のどかな暮らしを期待して赴任してきた勇人の不信感が大きくなっていき、「なんなんだ、この村は!狂ってる!」と言わしめるほどになっていきます。

 

村で起こった事件を村ぐるみで事故として処理しようとする村人たち。

行方不明になった子供の在宅を確認したと嘘をつく村人。

乙女小屋から石鹸の匂いをさせながら帰っていく男たち。

直後に崖から突き落とされ、村の暗部を明らかにすると決意する勇人。

このような展開を見せ、サスペンスからホラーへと物語が転換していきます。

 

ポイント3

狂気に取り憑かれた人間の恐ろしさ

一連の惨殺劇はたった一人の人間の狂気によって起こっています。

復讐などの理由なら納得はできないにしろ、多少の理解はできます。

それに復讐されるようなことをしなければ殺されることはない、と安心もできます。

本人の意図しないところで恨みを買うことはあり得るのでしょうけれど・・・。

 

狂人の域に達してしまった人間の恐ろしさは無関係な人間にも被害が及ぶことです。

そして、環境によって誰しもがそのようになってしまう可能性があること、他人からは狂っているとわからないことがなにより恐ろしいです。

 

まとめ

 

多少の性描写や変態趣味、終盤にスプラッター的な要素があるので、苦手な人は気を付けてください。

 

サスペンスやホラー、金田一耕助探偵(金田一少年ではない)が登場する作品が好きな人におススメします。

上で少し書きましたが、ミステリーものを期待して見る作品ではないと感じました。

 

登場人物は多いですが、生き残れる人はあまり多くありません。

誰が生き残るのか、誰が犯人なのかはここでは書きません。

作品を読んで楽しんでみてください。

そして、最後まで読み終わってからもう一度読むとキャラクターの心情がより深く読み取れて一層楽しめると思います。

 

惨殺半島 赤目村 コミックス

 

作者:武富 健治 様

原作協力:中島 直俊 様

全2巻 完結

 

BookLive!で無料立ち読み

下のバナーよりBookLive!へアクセスして「ブラウザ試し読み」か「アプリ試し読み」をクリック

 

また、Kindle Unlimited一か月無料体験で1巻を無料で読めます。

※2019年4月現在

Kindle Unlimited 【30日間無料体験】で読む

 

作者:武富 健治様 原作協力:中島 直俊様
最新情報をチェックしよう!