WEBコミックアクションで連載していた「鉄民」の感想です。
人間が金属でできた正体不明のアンドロイドのようなものに入れ替えられる恐怖をたっぷり感じることができ、先が読めない展開の作品です。
作者の菅原敬太さんはTVドラマ化された「走馬灯株式会社」を代表作とし、漫画の原作まで手掛けています。
私がこの作品を知ったのはニコニコ漫画でした。
作中で「奴らは人じゃない。鉄でできた鉄民なんですよ。」
というセリフがあるのですが、このシーンのコメントで「アルミでできていたらアルミンなのか」とのコメントがあり笑った記憶があります。
鉄民 の内容
のどかな沙々来島に危機が迫る。
島に住む高校生「滝沢実絽」が見つけた置き忘れられた携帯電話。
落とし主からの着信に導かれるまま、人気のない神社の境内に足を踏み入れる。
そこで発見したのは倒れた人。
そして顔が剥がれ機械の顔を持つ異形の存在だった。
からくも危機を脱した実絽は、島の住人が少しずつ「鉄民」と入れ替わっている事実を知る。
日常に紛れ込み、人間のふりをする鉄民の目的は一体・・・。
いつも通りに生活している友人たちは本当に人間なのだろうか。
鉄民 キャラクター
滝沢実絽:たきざわ みろ
高所・対人・閉所・暗所・昆虫・先端など様々な恐怖症を抱える高校一年生の少女。
弓道部所属。
先輩である串田に好意を寄せている。
内気で怖がりな平凡な少女。
黒岩千佳:くろいわ ちか
明るく友達も多い学校の人気者。
実絽の友人であり弓道部に所属する。
実絽に串田が好きなことを打ち明ける。
串田
高校3年生。弓道部所属。
神社の境内で襲われていた実絽を助ける。
さわやかな好青年で部内での人気が高い。
網浜
高校3年生。弓道部所属。
串田のことが好き。
串田に過度に干渉する黒岩が気に入らない。
鉄民 の感想
人口約3500人の海に浮かぶ孤島「沙々来島」を舞台としたサスペンス要素があるホラー漫画です。
物語終盤の実絽の日記がモノローグになって序盤の物語が進んでいきます。
冒頭で実絽が拾った携帯電話の情報提供者によると、すでに島の10分の1が鉄民に入れ替わっているとのことなので、10人に1人は鉄民ということになります。
学校のクラスの人数が30~40人だとすれば、1クラスに3~4人いる計算です。
以外と少ないイメージですが、静かに確実に鉄民は増えているのです。
鉄民とは
金属でできた中身に人造の皮膚を纏ったアンドロイドのような存在。
映画「ブレードランナー」でいうレプリカント。
のようなイメージです。
皮膚の質感などは人間そのものであり、見た目で人と鉄民の判別はできない。
また、入れ替わる際にオリジナルの人間の記憶までコピーする。
手首を抜くと麻酔針のようなものが仕込まれており、それを使い人の身体の自由を奪う。
この針には直前の記憶をなくなる作用もある。
これは、人を連れ去ることに失敗した場合に自分の姿を忘れさせるためである。
連れ去ることに成功した鉄民は人間と入れ替わり、元の人間と同じように生活する。
どのようにして作られたのか。
入れ替わる目的はなんなのか。
連れ去られた人間はどうなるのか。
詳細は一切不明。
※物語を最後まで読むことで全て判明する・・・?
鉄民と人間の見分け方と序盤の展開
鉄民と人間の違いを見分けるのは困難です。
しかし、いくつかの特徴があります。
・人に聞こえない周波数の音が聞こえる。
・衝撃を受けると比較的簡単に仮面のように顔が外れる。(「キン肉マン」のウォーズマンの如く)
つまり、普通に生活している分には人と鉄民を見分けることは不可能に近いといっていいでしょう。
万が一鉄民の存在を知った人間いた場合、必ず連れ去り入れ替わります。
島民に存在を知られず水面下で入れ替わりを行うことを徹底しているのです。
このため、鉄民は島民に正体を知られることなく、人と入れ替わることができています。
ここで、一つ疑問が浮かびました。
物語の冒頭で携帯電話に電話をかけてきた人物(以降、電話相手と称す)からの情報で鉄民の存在を知ることができたのですが、電話相手はなぜ鉄民のことを知っていたのでしょう。
上記の鉄民の内容の部分で書きましたが、実絽はこのあと人気のない神社の境内に誘導され鉄民に襲われることになります。
このときは神社の近くに住む串田に助けられ事なきを得ましたが。
電話相手の正体について、この時点では
- 「鉄民側」の人間、あるいは鉄民である。
- 鉄民に敵対する側の人間である。(鉄民に敵対する鉄民?)
以上のようなことを考えました。
また、実絽を利用、もしくは罠にハメようとしているのだろう、との予想もできました。
このように考えていくと、神社で串田と会ったことも本当に偶然なのか。
電話相手と繋がっているのでは?と疑念がわいてきます。
または電話相手と敵対していて実絽を助けた?
このように序盤から陰謀渦巻く展開が想像されるのです。
人と入れ替わる鉄民と相まって何が真実なのかわからなくなります。
鉄民と電話相手
上記のとおり、神社で鉄民に襲われた実絽は先輩である串田に助けられます。
まず、神社で鉄民に襲われるシーンですが、本当に恐ろしいです。
この場面は、まさに鉄民が人を攫う現場を実絽が目撃してしまうシーンですが、夢にみるような気持ちの悪い動きで襲い掛かってくるため鉄民の恐怖を十分に感じることができます。
あたかも、進撃の巨人の奇行種のような気持ち悪さです。
この場は逃げることができた実絽と串田ですが、電話相手が鉄民の存在を知ったものを必ず連れ去ると言っているとおりに再び二人の前に鉄民が現れます。
このとき、串田は気を失っており、実絽はなんとか串田を助けようとしますが・・・。
壁に顔を打ち付けられた実絽の顔が外れ、機械の顔がガラスに映ります。
なんと実絽は鉄民だったのです。
ここまでが、1話目で判明する事実です。
電話相手によると、稀に人と入れ替わったが自分が鉄民だということを忘れて自分が人間だと思い込んでしまう不良品があるということです。
電話相手はこのことを知っていたかのようなそぶりをみせています。
ここからの展開は目が離せません。
二転三転するストーリーに実絽が鉄民だったとき以上の驚きを感じるでしょう。
このような流れのなかで鉄民の本当の目的(?)や電話相手の意図も判明します。
電話相手によると、鉄民は島の人間を全員鉄民にして次は本土へ進んでいくつもりだ、といっています。
しかし、それは不可能なのです。
なぜなのか。
それは作品を読んで確かめてみてください。
攫われた人間がどうなったのか。
鉄民の目的も知っていながら上記のような嘘をつくのはなぜなのか。
この作品の結末を推理するのは不可能に近いと思います。
作中から引用させていただくと、
「奴らは狡猾なんだ。騙されるな。」
これに尽きるとおもいます。
まとめ
サスペンス・ホラーなどが好きな人におススメします。
また、ゲーム「スナッチャー」、映画「ブレードランナー」、小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」などの影響がある作品だと考えられるので、それらの作品が好きな人には合うと思います。
サイバーパンクな雰囲気ではありませんが、ラストまで綺麗にまとまっていると感じました。
のどかな島とアンドロイドというアンバランスさも良いです。
まるで、サウンドノベルゲームで序盤の選択肢を間違えてしまい、違う次元に迷い込んでしまったかのような感覚があります。
仮に携帯電話を拾うか拾わないかの選択で拾わない選択をしていたらラブコメ展開になったのではないでしょうか。
鉄民 コミックス
作者:菅原敬太様
全3巻 完結
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