外天楼 -日常SF短編ミステリー-

増改築を重ね、迷路のように複雑になっている集合住宅群「外天楼」の住人と、そこに関係する人々の話を日常チック、いやSFチックかミステリーか。

といった具合に、ごちゃ混ぜにした一冊。

やたらとミステリー部分にスポットが当たっている気がしますが、日常部分があるからこそ面白く感じました。

 

本格ミステリー好きの人にはどう映るかわかりませんが、個人的にはミステリー部分も素直にすごいと思いました。

ネタバレになるから語れないのが悔しいほどです。

 

同じ作者様の「それでも町は廻っている」が好きな人にはおススメです。

それ町とは大分重さが違いますが・・・。

 

外天楼 各話のあらすじ

 

ここで簡単な各話の簡単なあらすじをなるべくネタバレをせず紹介します。

 

第1話 リサイクル あらすじ

中学生男子(?)3人組(アリオ・ダイチ・芹沢)が書店でエロ本を購入しようとするが失敗する。

諦めきれない三人はダイチの提案で資源ゴミをあさることにした。

運よくゴミ捨て場で発見したがアリオの姉キリエに目撃されてしまう。

キリエの発言により、エロ本を捨てられてからの経緯を推理する三人だったが・・・。

 

第2話 宇宙刑事vs.ディテクト あらすじ

10年後、大人になったダイチは宇宙刑事になっていた。

悪魔騎士団の支部を潰そうと奇襲をかける。

戦闘の最中、倒したロボットの戦闘員の中身が人間の死体となっていた。

そこに刑事と探偵が登場し、犯人捜しが始まる。

 

第3話 罪悪

舞台は戻って外天楼の一室。

新型ロボットが欲しい工場で働く女性。

自分の安月給では手が出ない為、旧型のロボットを捨てて維持費を購入資金に充てようとする。

しかしそれはロボット廃棄法に違反する行為だった。

 

第4話 面倒な館

外天楼で死体が発見された。

玄関には鍵がかかっており、キーは遺体のポケットで見つかった。

窓は開いていたが、現場は4階であり窓の外は足場もない絶壁である。

限りなく密室に近いこの状況は殺人なのだろうか。

 

第5話 フェアリー殺人事件

人工生命体「フェアリー」

観賞用の小型の人型生命体である。

クローン技術発展の過程で生まれた生命体だが、その是非については意見が分かれているため討論会が行われた。

討論会後、規制反対派の鬼口が死体となって発見される。

ダイイングメッセージが残る現場で犯人捜しが始まるが・・・。

 

第6話 容疑者Mの転身

フェアリー殺人事件が起こった30分後、フェアリー工場が襲撃され工員6人が刺される事件が発生した。

鬼口殺しの容疑者「諸葉」の取り調べが始まる。

フェアリー工場襲撃との関連はあるのか。

急展開を見せる取調室内に新たな事件発生の報告が入る。

 

第7話 鰐沼家の一族

外天楼で新たな死体が発見された。

発見された部屋からは鬼口の指紋が検出される。

契約者は架空の人物だったが、アリオの部屋の契約者と同じ人物だと判明する。

そして上層部は重要参考人としてアリオの確保を指示したのだった。

第8話 キリエ

アリオと接触する刑事の桜場。

署まで同行を願う桜場だったが・・・。

最終話 アリオ

物語が完結する最終話。

ネタバレになる為なにも書けません・・・。

ご自身の目でお確かめください。

 

外天楼 感想

 

全1巻の中に9つの話があり、オムニバス形式で進んでいく短編集です。

あらすじで紹介したように、日常話や殺人事件、ロボットやクローンなど色々な話があります。

 

他の話にでてきた登場人物が他の話にでてきたりするのは勿論のこと、時間軸も変わりながらそれぞれのキャラクターたちが交差し運命に翻弄されていく面白くて悲しい話です。

なんだかゲームの「街 ~運命の交差点~」のような感じですね。

「街」でキャラ同士の関わりがあるように、外天楼でも各話同士関わりがあります。

 

日常的なミステリーや殺人にかかわるミステリーを、時にシリアスに、またコメディタッチで描いており、全1巻にしてはボリュームが多く感じました。

人間関係が複雑で重いわりには日常部分で緩めてくれる緩急があるからでしょうか。

 

モブかと思ったキャラでもあとで再登場し重要な役割をもつ場面があるなど、何度も読まないと楽しみきれない作品でもあります。

1巻完結なので、手軽に読み返せるのも良いです。

 

そしてなにより、石黒正数さんの描く世界は独特でジャンルに作者名を使っても良いと思うほど個性的です。

さらに不思議と女性がかわいい。

なぜなのかはうまく説明できないんですけれど、わかってくれる人はわかるかと思います。

 

繰り返しになりますが、ミステリ、SF、日常コメディ、さらにロボットやクローン問題など盛りだくさんの内容で楽しめる作品はそうそうないと思います。

増改築を重ねた外天楼のように複雑に絡み合う各話も必見です。

1巻完結の作品の中ではトップレベルの良い作品だという人も多いのではないでしょうか。

 

外天楼 コミックス情報

 

作者:石黒 正数 様

全1巻 完結

第1巻:2011年10月

 

作中に登場したチーズきつね丼は食べてみたい。

カツとじラーメンはカツがラーメンスープでグズグズになりそう。

 

コミックスリンク 電子書籍版

作者:石黒正数様 出版社: 講談社 (2011/10/21)
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